今年は本州も早い梅雨入りとなりましたが、早く終わるわけではないようで、
農業に携わる人々にとっては、また頭の痛い年になりそうです・・・

長雨になると、様々な形で野菜や果樹に影響が出てしまいますが、
皆さんはどんな対策をしていらっしゃるでしょうか？

「自然の影響だから、どうしようもない・・・」というお話しも良く聞きます。

ところで、長雨や豪雨、台風などで作物が弱った時に、
お酢を上手く使うと、酢が植物の光合成の代わりをして成長を助けてくれることはご存知でしょうか？

長雨や台風などで、野菜が黄色くなってしまうことが多々ありますが、
これは毛細根がダメージを受けてしまうことで起こる現象です。

湛水状態で弱ってしまった根は、簡単に壊死してしまったり、微生物によって分解されてしまうのです。
長雨や台風の後に弱っている作物の根を見ると、毛細根がすっかり無くなっていたり黒く腐っている事があるのですが、
これがその状態です。　いわゆる「根傷み」や「根腐れ」などと呼ばれるものです。

こうなってしまうと植物はミネラルを吸うことができなくなってしまいます。
何とか水は吸う事は出来るので、天候が回復して蒸散が始まると水ばかり吸いあげ始めます。

さて、水に比較的溶けやすい栄養分が何か覚えていらっしゃいますか？
「窒素」ですよね。植物の体内には葉緑素の生成や光合成を助けるマグネシウムや塩素、銅や鉄、マンガンなどの多種多様なミネラルがなくなり、窒素だけが増えてしまうのです。


こうなると、葉緑素を保つことができなくなり、黄色くなってしまうということです。
そして細胞壁はグルコースが連結したセルロース（繊維）で出来ていますから、細胞分裂に細胞壁の合成が追い付く事が出来ず、
植物自体もブヨブヨになって駄目になってしまうというわけです。

さて、こうなるとどうずれば良いのでしょうか？？
まずは根を修復して、ミネラルを吸収できるようにする必要がありますよね。

これには何といっても炭水化物が必要です！
細胞壁（セルロース）の原料である炭水化物が大量にないと、植物体の修復は出来ません。
それに、根から分泌され、ミネラルをキレート化して吸い上げる「根酸」の合成にも炭水化物が必要です。

ここで「酢」の出番です。
酢の主成分である酢酸（CH₃COOH）は、炭素元素2つと水素元素が4つ、そして酸素元素２つから構成されています。
つまり、光合成で作られる『グルコース（ブドウ糖）』C₆H₁₂O₆と同じ炭水化物の仲間なのです！



ですから、酢を散布するということは、光合成産物を植物に直接与えるということになるのです。
そして、炭水化物の中でも、特に酢酸は分子量がグルコースの1/3と小さい為、植物が早く吸収できるのです。

散布する方法ですが、根（地下部分）がある程度無事なら、かん注でも大丈夫ですが、
根（地下部分）がほぼダメージを受けている場合は、食酢（酸4.5％）を30倍～50倍希釈で葉面散布をお勧めします。

吸収された酢酸は、セルロースの材料として根の修復に使われるほか、根酸の合成やエネルギー（ＡＴＰ）合成にも使用されます。
希釈倍率について、濃すぎるのでは？というお話しも聞きますが、急いで修復したい場合は、30倍～50倍希釈が有効です。
200倍などで対応すると、治るまでに数十倍の時間がかかります。

また30倍～50倍希釈のお酢は、植物ホルモン的な働きも期待できます。
つまり、エチレンやアブシジン酸のように、栄養成長を一時的に抑制してくれるのです。
栄養成長・細胞分裂が抑制されると、炭水化物の消費量は根の応急措置に回すことができ、植物が早く修復されると言う訳です。



一方、100倍以上の薄い食酢を与えると酢酸と窒素が結びついて、アミノ酸を形成します。
つまり栄養成長が促進されるので、光合成産物を与えたい時などに効果的です。

逆に、1倍～5倍くらいの濃い酢は植物にとって害になります。
よく除草剤として５％～１０％（1倍～5倍濃度）の酢酸養液が除草剤として販売されていますが、
これは酢の濃度障害を利用しているのです。

この性質を上手く利用すれば、実際、酢は特定防除資材に指定されていますし、
PHを下げることによる殺菌作用があることでも知られています。

酢に含まれている酢酸などの有機酸には、葉に溜まった硝酸を同化（消化）する働きがあります。
また有機酸は、石灰や苦土などのミネラルをキレート化して、作物体内でのミネラルの移動をスムーズにしてくれる働きもあります。

ミネラルは葉緑素の生成や光合成を助けたり、植物内でおこる様々な代謝作用を進めたりする酵素に欠かすことができません。
窒素の同化（消化）や酵素の働きが活発になることで、病気が出にくくなったり、食味が向上するのです。

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